 |


挿花家。福岡県生まれ。19歳で上京、花修業を始める。自由で、魅惑に富んだ独自の世界が注目され、1970年にはエリザベス女王夫妻来日に際して英国大使館で開かれた晩餐・舞踏会の飾花を担当。舞台美術のほか、大舞台での挿花パフォーマンスを行う一方、東京青山で花教室を主宰。現在発売中の「夏京都」(扶桑社刊ムック)などの雑誌でも作品を発表。 |


障子をすだれに掛け替え、のれんや座布団も麻生地のものにして、いかにも涼しげに。昔の日本人はそんな夏じたくをして、暑い季節を迎えました。実際に涼しいという以前に、見た目から涼しさを演出したのです。襖や障子が珍しくなった現代でも、やはりそんな気持ちは忘れたくないものです。
花も夏は夏らしく、「涼」を演出する飾り方があります。そのひとつが、水を見せることです。水盤などの平たい器に生けて水面を見せたり、ガラスの花器を使うことですね。わざわざそういった花器を買う必要はありません。例えばいつもは食卓で使う深鉢やサラダボール、形のきれいなビンなどでも充分です。水は、器にたっぷり入れると涼しく感じると思いがちですが、私はおすすめしません。水が多いと重い感じになるからです。器の半分以下が美しいと思います。試しに、口までいっぱいに水を入れたガラスビンと、半分くらいまでしか水を入れていないガラスビンを見比べてみてください。水面と口までに「間」がある方が、涼しげだし美しいと感じるはずです。大切なのはこの「間」なんです。
|


「間」を取りたいのは、花を生けるときももちろん同様です。あまりいっぱいに花や葉を入れず、花と花の間に風が通るように少なめに。風を目で見ることはできませんが、そんなすき間があって、ちょっとした風で花が揺れると風が見えるように感じます。それが「涼」の演出。日本人的なデリケートな感覚ですが、本当に涼しく感じますからぜひ試してみてください。
そのように、「間」のある生け方となるとやはり投げ入れですね。生けたい花を手の中で取り合わせて、思う形になったらそのまま花入れに。剣山やオアシスなどを使わない、自由で勢いのある花です。とはいえ花入れの中で花が動いてしまって形が定まらない、そんなときは花留めを使います。小石、箸置き、ナプキンリング、何でもいいんです。花の根元に置いて、動かないように止められればいいのですから。きれいな石やおしゃれなアクセサリーなどを使ってあげれば、花も剣山に刺されて動けないのとは違って、よろこんで止まっていてくれるのではないでしょうか。
|


さて、何を生けるかですが、私が夏の花で大好きなのはオオヤマレンゲ。白い花がなぜか横向きに咲く花です。真っ白な蕾は清楚そのもの、開くと何ともいえない上品な華やかさなのです。茶道では格の高い花とされていますが、そんなに格式張らずさりげなくカゴなどに生けてもいいものです。ほかにも、ナデシコ、キョウカノコ、ササユリなど素敵な花が沢山。いつもいうことですが、山のものと里のものを組み合わせて生けてみてください。山のものは、この時季なら例えば枝もののナツハゼなど保ちもいいし、枝が涼しそうでいいですね。
夏は花が弱りやすい季節ですので、「花養い」にも気をつけてください。基本は水切り、水の中でよく切れるハサミで切る。切れるハサミがなかったらカッターナイフを使ってもいいでしょう。水は毎日、できれば朝夕、替えてあげる。長く保たせるるために水に入れる薬品もありますが、私がよく使うのは焼ミョウバン。ひとつまみ入れるだけで、結構違います。それでも、花はいずれ枯れます。これもいつもいうことですが、枯れるまで花に心を寄せて、花のある四季を楽しんでいただきたいですね。
|


 |